ALL GENRE日本を守る!福島で除染活動を行った陸上自衛隊第1師団・第1特殊武器防護隊の男たちと特殊装備!
2011.10.31
3・11、東北を襲った未曾有の大災害と原子力発電所事故。3月12日から7月31日まで、福島で除染任務に活躍したのは、陸上自衛隊第1師団・第1特殊武器防護隊だ。陣頭指揮に奮闘した速水孝智隊長へのインタビュー、そしてその任務に就いた特殊車両の取材を敢行した!
除染のスペシャリスト、語る
速水孝智二等陸佐:三重県出身。第1特殊武器防護隊隊長。防衛大学校で応用化学を専攻、放射線取扱主任者の資格を持つ。1995年3月に発生した「地下鉄サリン事件」では、第12師団司令部(当時)化学幹部として活動した。
陸上自衛隊第1師団第1特殊武器防護隊:東京都練馬駐屯地に所在し、放射性物質や生物・化学などの特殊な武器での攻撃などに対しての防護を担任する対特殊武器専門部隊として、被害状況の偵察、判別などの分析、汚染を無害化する除染などの任務を行う。隊のシンボルマークは、化学科職種を表す職種き章(2つのフラスコと桜星)に加え、偵察の象徴であるカナリヤをモチーフに、特殊武器(NBC/核:Nuclear、生物:Biological、化学:Chemical)の頭文字をあしらい、それらの汚染を迅速かつ確実に除染する部隊をイメージしている。
化学防護車(装輪)(B):放射線量の測定や除染活動に使用した特殊装備の数々をご紹介。82式指揮通信車の車体を基本として開発、核兵器や化学兵器が使用された状況下で、放射線や汚染状況を調査、測定するNBC偵察車輌。1995年の「地下鉄サリン事件」や1999年の「東海村JCO臨界事故」にも出動した。放射性物質対策を施し、空気浄化装置を装備する事で、乗員を外部の汚染から防護する。放射線測定器や化学剤検知器、マニプレーターを使用して車外に出ることなく、車外の汚染状況を迅速に確認することが可能。中性子遮蔽板を、必要に応じて取り付ける事ができる。最高出力は308ps、最高速度は95km/h。小松製作所製造。
「かつては、国際条約で化学兵器の使用が禁止されている事もあり、一部では『自衛隊に化学はいらない』と言われていた時期もありました。しかし、1995年の『地下鉄サリン事件』を境に化学兵器への対応が見直されるようになり、さらに生物兵器を保有している国家が存在するという懸念から、核兵器・化学兵器・生物兵器に対処できる特殊武器防護隊が組織されたのです」
東日本大震災に際しての特殊武器防護隊の被災地での主な任務は、放射線量の測定と除染。除染所を設置して人体や衣服などから放射性物質を洗い流す事であった。対核兵器のスペシャリストとは言え、原発事故現場付近での活動に恐怖心はなかったのだろうか?
「怖くはありませんでした。我々は放射線から身を守る装備を持ち、平素から教育も訓練もしていますから。私が思うに、放射線に関する知識が少ないほど恐怖心があるようです。放射線の特性を知らないからこそ怖いのでしょう。放射線は自然界にも存在しますし、身の回りの至る所にあります。しかし、大量に浴びなければ、人体に重大な影響を及ぼすような事はありません」
日本を守る男たちが励みにするもの
化学防護車のディテール/左上:車体後部に搭載されたマニプレーターを使って、サンプルの採取などを行う。操作には熟練した技術を必要とする/右上:車外へ出ることなく周囲の状況を確認できるよう、様々な機器を装備している。写真は収納式の地磁気方位計(左)と気象計(右)/下:操縦席への出入りは車体上部にあるハッチから行う。
除染車3形(B):陸上自衛隊の31/2tトラックに、2,500Lの水槽と加温装置を搭載、車体前面と側面に散布ノズルを装備している。地域、施設等の大規模な除染作業に使用可能。化学防護車に見られるような、中性子線や有害物質から乗員を保護するための機器は装着されていない。製作は、いすゞ自動車(タンク部は東急車輌、加温装置はユニバーサル特機)/左下:車体の前面と側面に搭載された散布ノズルから水や薬剤を散布し、道路や建築物、車輌などを除染する/右下:車輌後部には、約15メートルの長さのホースが付いた除染用の放水銃・JET GUN(有光工業製)を装備している。
94式除染装置:11/2tトラックに搭載され、人員を除染する際に使用するテントも付属する。機動性に優れ、放射性物質や生物兵器、化学兵器などに汚染された人員、車両などの除染に使用される。除染装置の製造は、ユニバーサル特機。トラックは日野自動車とトヨタ自動車の共同設計。製造は日野自動車、納入はトヨタ自動車。/左下:11/2tトラックに搭載されているので、機動性は抜群。温水、熱水、除染剤、泡沫除染剤などによる除染に活躍する/右下:付属の身体洗浄用テント。温水シャワーが完備されており、福島では被災者の身体や持ち物、ペットなどの除染に使用された。
福島への災害派遣にあたり、速水隊長は隊員達の使命感を事前に確認したと言う。「自衛隊員だって怖いと思う者もいるでしょうし、心配する家族もいます。それでも、『熱望する』『できれば行きたくない』など5段階の意思確認を行いましたが、ほとんどの隊員は『熱望する』でした。隊員達は皆、使命感をもって被災地での任務に就いていたのです」
今回の震災前と後では自衛隊に対する世間の見方が変わったと、速水隊長は話す。
「正直、以前は自衛隊に対して良くない印象をお持ちの方もいたと思いますが、今では我々に御礼を言って下さる方がたくさんいます。国防と災害派遣は、どちらも国民の平和を守るという自衛隊の重要な任務です。我々の仕事を理解し、自衛隊に対して好意的な方が増えることは、とても嬉しいことであり、励みにしているものです」
photo: Gao Nishikawa
text: Yoichi Suzuki
取材協力:
防衛省/陸上自衛隊練馬駐屯地/陸上自衛隊第1師団・第1特殊武器防護隊
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